60年前の料理本に載っているダイエット料理を作る
ダイエットに向いた料理というものがある。好きなものだけを食べていては痩せないのだ。では、どんな料理を作ればいいのだろうか。 そこで先人の知恵を借りようと思う。昭和29年に出版された料理のレシピが書かれた本に「やせたい人の食事」というのが載っていた。それを作って食べてみようと思う。
昭和29年の料理本
料理本は多くの出版社から出版されている。本屋さんに行けばたくさんの料理本が並んでいる。そんな料理本は昔から出版されていた。昭和29年(1954年)に出版された料理本を手に入れたのだ。
今から61年前に出版された料理本だ。昭和29年と言えば、街頭テレビで力道山やシャープ兄弟が人気を博した年であり、今では当たり前にある缶ジュースを明治製菓が初めて発売した年でもある。ゴジラの一作目が上映されたのもこの年だ。
この本に「やせたい人の食事」という特集があった。今も昔もダイエットは皆が気になることなのだろう。先人の知恵というか、おばあちゃんの知恵袋というか、昔から学ぶことは多いはず。そこでこの本に載っている「やせたい人の食事」を作ってみようと思う。
やせたい人の朝食を作る
「やせたい人の食事」のページでは「篤子さん」という人がやせる食事を作っている。このページの斬新な点は、篤子さんの日記的なものと、写真は載っているが、レシピは載っていないことだ。料理名は分かるが分量などは不明だ。
本によれば、朝食は「ご飯」「あさりとわかめの味噌汁」「生野菜」「ひじきの煮付け」だそうだ。文中には一番簡単な生野菜の作り方だけ書いてある。「トマト、胡瓜(きゅうり)、キャベツ。胡瓜とキャベツは塩をふって軽くもんで」だそうだ。
「やせるために、食事の量を控えるなんて愚の骨頂」と書いてあった。量を減らすダイエットは一番簡単に結果が出るけれど、リバウンドもしやすい。 そのような考え方は今も昔も変わらないようだ。ただ愚の骨頂という表現は現代では、あまり使わない気がする。ということで、朝食の完成だ。
冷静によく考えるとご飯のおかずになるものが、ひじきの煮付けくらいである。野菜は塩でもんであるとはいえ、ご飯のおかずになるほどではない。食事量を減らすのは愚の骨頂と本にはあるが、自然と量が減る料理なのかもしれない。
本を読むと量は減らないらしい。このページを書いた篤子さんは、ふわっとだけれど、軽く二杯いただいている。食事量を減らすのは愚の骨頂を体現している。私も二杯いただこうではないか。
やせたい人の昼食を作る
朝食の後は家事をするそうだ。またこの本は、料理本だけれど、「もこもこと立った泡の一つひとつに青空と私の顔とが、大きく小さく写って笑っている」、とポエミーなことも書いてある。そのスペースにひじきの煮付けのレシピがあれば便利だった。
昼食は「野菜サラダ」「トースト」「夏みかん」だそうだ。ここでも野菜サラダのレシピは詳細に書いてある。馬鈴薯(じゃがいも)も人参も、丸のまま塩茹でしたら、馬鈴薯はさいの目に、人参は小口切りして、玉葱(たまねぎ)はみじんに切って塩で軽くもむ、だそうだ。
お皿にキャベツの葉を敷き、野菜類を形よくのせたら、フレンチドレッシングを手際よくかける。これで完成だ。ちなみに私の家にはトースターがないので、トーストはフライパンで焼いた。
食事量を減らすのは愚の骨頂という精神は昼食にもあるようで、トーストは一枚半である。そこそこの量だ。そして、サラダの量も多い。写真を参考に盛ったら、かなりの量なのだ。
これだけ野菜を食べれば体にいい気がする。ただ味の方は現代を生きる私の口には合わなかった。最近はサラダもオシャレだったりする。しかしこのサラダはシンプルで、食材の味だけがダイレクトに分かり、ゴリラじゃないので、ザ・野菜という味がどうにもダメだった。
やせたい人の夕食を作る
この本を書いている篤子さんは、昼食のあとに、喫茶店に行って、ケーキを食べたそうだ。ダイエットをする気があるのか疑問だ。ただ「たった一回の間食では太りもしないだろうけど」、とちょっとポジティブ。そのポジティブも大切なのかもしれない。
夕食で初めてサラダがなくなった。「ご飯」「三つ葉のすまし汁」「しめ鯖と大根おろし」「あさりとわけぎのぬた」。本文中にはないが、写真には「きゅうり」もある。 「ぬた」のレシピがぜひ欲しいが載っていない。当時は「ぬた」くらい作れるのが普通だったのだろう。今も普通かも知れないが私は作れないのでクックパッドを見て作った。
朝昼晩と共に油の多い料理はない。量が多かったりするけれど、確かに痩せそうな気がする。この本は全体的に油使ってるな、と思う料理が少ないけれど、その中でも特にこの特集では少ない。痩せるためにはやっぱり油を控えることが大切なのだろう。
あっさりとした夕食が完成した。当時を舞台にしたドラマを見ると、夕食では、こんな感じの食事が並ぶが、これはやせる食事だったのだ。別のページではハンバーガーを作っていたし、現代と変わらぬ料理もあったようだ。
味は当然美味しい。朝食にはなかったご飯のおかず的なものもある。大根おろしに醤油をかけて、それでご飯を食べている。「ぬた」もからしの辛さがご飯のおかずになった。ただ質素ではあるので、痩せるだろう。いい意味で手が込んでいないので、現代のダイエット料理より作りやすいと思う。
太りたい人の食事も作る
このページを見ていたら、「太りたい人の食事」も載っていた。最近の料理本はだいたいダイエット料理しか載っていないが、この本にはその逆も載っているのだ。
これを書いたライターは「鶏骨が洋服を着ているような印象」らしく、それを解決したいそうだ。適当に肉がついて、健康美に輝く肉付きがある人が羨ましいそうだ。先の篤子さんが聞いたら、皮肉か! と怒るのではないだろうか。
今回は朝食だけを作ろうと思う。昼食と夕食も載ってはいるのだけれど、本の保存が悪いのか、写真があまり鮮明ではないからだ。古い本あるある。朝食だけで十分太ると感じるから大丈夫だろう。なんせトーストが朝から4枚なのだ。
朝食は「トースト」「野菜とベーコンの炒め物」「牛乳」「バナナ」である。炒め物は、ベーコンを一枚切って炒め、適当に切ったタマネギと、茹でてさいの目切りした馬鈴薯を入れて、塩こしょうで味付けする。
実に簡単である。トーストを4枚も食べるので、料理時間より食事時間を考慮しているのかもしれない。ちなみに昼は「炒飯(チャーハン)」がメインで、夜は「南瓜(かぼちゃ)のあんかけ」がメインらしい。現代で考えるとヘルシーかもしれない。
ヘルシーと書いたけれど、トースト4枚の迫力はすごい。太るとは思う。痩せたい人の食事では出てこなかった炒め物が、現代人の私にはとても美味しく感じた。ベーコンの油が美味しいのだ。美味いは油なのだ。
先人の知恵を借りた
痩せるためにどうすればいいかと考え、昔の料理本で先人の知恵を借りようと思い立った。分かったことは、やっぱり油だと思う。その辺に気をつければ、たくさん食べてもいいということだ。それと当時の本は、ライターのキャラが立っていて面白いことも分かった。